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とにかく萌えを吐き出す為に作ったので 何も萌えが無い時は失踪するかもしれません。18歳未満閲覧禁止。

愛憎の果てに 5 弐


うわぁ…7日ギリギリセーフ。
で、出来ました。弐が。そしてVFBは来なかった…。おおぅ…(´;ω;`)
あ、明日は来るよね!?大丈夫だよね!?くそっメール便じゃなければ…
ああっ!早く見たいようぉぅぉぅ。聞けば藤田のマンガがいいことになってるみたいですし!
やったー藤田!!おめでとう藤田!!ふじゆりバンザーイ!!


さて、弐の方ですが、注意事項を…。
秀雄が好きな方、壊れ始めた瑞人を見たくない方、女々しい藤田が苦手の方は
見ないほうがいいかもしれません。
そして、ふじゆりなんですが、藤田が霞んでしまってます。
あぁ、もうホントにゴメンナサイ。
百合子が最後どうなってしまうかは、多分ご想像の通りだと思います。
死にネタはありませんが、バッドEDが苦手な方は回避してください。

よ、よろしいですか?大丈夫よ、という方だけ続きからどうぞ~。








 嵐が去った後のような静けさが戻った邸の中、藤田がチョコレエトの入ったカップを片手に百合子の部屋のドアをノックすると、中から微かな返事が聞こえた。
「失礼いたします」
 ドアを開け、百合子を見ると、少し疲れた顔をして寝台に腰をかけている。
「チョコレエトでございます」
「ありがとう」
 差し出されたカップを両手で受け取り、百合子は、そっと口をつけた。温かな甘みが口の中に広がり、心の強張りを溶かしていくようだ。
徐々に落ち着きを取り戻した百合子は、そばにあった小さな卓子(テエブル)にカップを置くと手巾(ハンカチ)で口を押さえた。
「秀雄さんは?」
「お帰りになられました」
「そう……」
 先程、階下から怒鳴り声が聞こえたが、あれは秀雄の声だ。何を言っているのかは聞き取れなかったが、あの様子だと恐らく明日も来るのだろう。今日のことを訊いてくるのは間違いないが、正直に言えば軽蔑される。もしかしたらあの場に居た仲間として捕まって、『大切な家族』が引き離されてしまうかもしれない。それだけは避けたかった。
「秀雄さんとの話を聞かせてちょうだい」
「かしこまりました」
 藤田は秀雄に話したことを百合子に聞かせた。借財のこと、百合子の身代わりに瑞人があの場にいたこと、百合子は瑞人の後をつけてあの場に居た事にしたということ、多分逮捕した者たちから話を訊いているだろう事も、明日また秀雄が百合子に話を訊きに来ることも全て。
「私の力不足で申し訳ございません」
「謝らないで、あの場に秀雄さんが居たんですもの、仕方がないわ」
 申し訳なさそうに項垂れる藤田を、百合子は優しく慰めた。
「ありがとう藤田。秀雄さんが来る明日に備えて、もう休むわね」
「かしこまりました。なにかございましたら、お呼びください」
 藤田は一礼して去る間際、一瞬だけ昏い熱のこもった視線を百合子に向け、ドアを閉めた。百合子を求めたくても求めない『執事の藤田』の葛藤が垣間見え、百合子は冷笑を浮かべる。自分からは求められない。だから百合子から求めて欲しい。命令をして欲しい。全てが受身の女々しい藤田が愛おしく思えた。
 
 
藤田の匂いが消えた部屋で、百合子は明日の事で考えを巡らす。
多分、藤田の言ったことをそのまま言っても、秀雄のことだから納得などしないだろう。かといって正直に答えればどういう行動をとるか分からない。逃がしてくれた事を考えると百合子を捕まえる気はないと思うが、兄と身体を重ねた事を見過ごしてはくれないだろう。
どのように説明をしても、秀雄を納得させることは出来ないような気がして、暗澹たる思いのまま、百合子は寝台に身体を預けると、重い溜息を一つ吐いた。
いつの間に眠ってしまったのか、ドアのノックの音で百合子は目覚めた。
「おはようございます、姫様。朝食のご用意ができました」
 ドアを開け、藤田は、いつものように紅茶を淹れる。
 今日これからの事を考えると、とても食事どころではなかった。
「食欲が無いから朝食は、いらないわ」
「姫様……。では、何か軽いものでもお持ちしますか?」
「ありがとう、でも、いらないわ。それより秀雄さんは、いつ頃見えるのかしら?」
藤田から差し出された紅茶を受け取りながら、百合子は尋ねた。
「時間は伺っておりませんが、おそらく午前中にはお見えになるかと……。今から尾崎様に確認を取ってまいります」
「いえ、いいわ。きっと秀雄さんに聞いても、教えてくれるとは思えないもの……」
 昨日あれだけ藤田と揉めて怒鳴り声を上げていたのだ。時間を言えば逃げると思われて教えてくれないかもしれない。
 百合子は藤田に気付かれないように溜息を吐く。
「……秀雄さんがいらしたら、教えてちょうだい」
「かしこまりました」
 藤田が一礼して部屋を出て行ったあと、紅茶を一口啜ると渋味が口に広がった。これからの事を予感するような味に、百合子は少し顔を顰めた。

 百合子は着替えた後、秀雄を待っている間、冷たくなった指先を温めるように両手を擦り合わせる。今か今かと気を揉みながら待っていると
「姫様、尾崎様がお見えになられました」
 ノックの音と共に藤田の低い声が聞こえる。百合子の肩がびくりと震えた。
「今、行きます」
 震える声を押し殺して返事をすると、百合子は両手を強く握りしめて立ち上がり、部屋を出た。

「お茶をお願いね」
「かしこまりました」
 応接室に入る間際、藤田にお茶を頼みドアを開ける。中には既に通された秀雄が長椅子に座っていた。
 百合子の姿を認めると立ち上がり、待ちきれない様子で口を開く。
「百合子、昨日の事で訊きたいことがある」
「わかってるわ、秀雄さん。とりあえず、お座りになって」
「あ、あぁ」
 少し間の抜けた返事をしながら、秀雄は長椅子に座りなおす。
 百合子は向かいの長椅子に腰を下ろすと、おもむろに口を開いた。
「秀雄さんは、どこまでご存知なの?」
「お前の家の借財の事、それから、方々にあった借財が一手に握られて、借金のかたにお前達が見世物になっていたことだ」
 秀雄の蔑むような視線が突き刺さり、百合子は息苦しさを覚えた。
「そこまで知っていて私に何を訊きたいの?それとも私を馬鹿にしに来たの?」
「百合子……」
「ねぇ、私はどうすればよかったの?秀雄さん。……お兄様が見世物になっているって聞かされて……藤田は……何も……話して……くれなか……た……」
 我慢をしていたものが、秀雄と話したことで堰をきって溢れ出す。
「ねぇ!私はどうすればよかったのよ!」
 どうにもならない苛立ちが百合子を掻き乱し、慟哭となって口から吐き出される。
「姫様!」
 百合子の声に驚いたのか、藤田が慌てた様子でノックもせずに応接室へと入ってきた。片手に持っているお盆には、紅茶のポットとカップが二つ載せられている。
 藤田の声を聞いた途端、百合子は藤田に駆け寄り、背広にしがみ付いた。もう秀雄の顔を見ることすらできなかった。これ以上、幼馴染に軽蔑されることに耐えられなかったのだ。
 声を殺し、肩を震わせて泣く百合子の頭を、藤田は慰めるようにそっと撫でる。そんな百合子の様子を見て、居た堪れなくなった秀雄は無言で長椅子から立ちあがった。
「もういい、百合子。……すまなかった」
 そう言い残し、秀雄は悄然と野宮家を後にした。
百合子を追いつめるつもりなど微塵もなかった。ただ、何か力になれれば。そう思っただけだったのだ。
――お前は本当に不器用だな。女心というものが、まるで解ってない。
 以前、軍の仲間に言われた言葉を思い出し、秀雄は苦笑した。


 百合子から話を訊いたその夜、秀雄は軍の仲間に無理矢理、飲みに行こうと連れ出された。いつもなら断っている酒も、今日は気分を変えたいのも手伝って、しぶしぶ頷く。
浮足立っている仲間数人と繁華街に差し掛かった時、秀雄は、よく知っている顔を見かけた。
(あれは……百合子の所の庭師じゃないか?)
 何度も野宮家に出入りしていた秀雄は、庭師の真島の顔をよく覚えていた。
 真島に声を掛けようとした時、秀雄の視線の先にいる人物に驚いた仲間が秀雄を止める。
「お前、まさかあの男に声を掛けるつもりじゃないだろうな?」
 まるで内緒話をするかのように低い声音で話す仲間に、秀雄は怪訝そうな表情で返す。
「どういうことだ?」
「あの男は止めておけ、あいつは青幇とも繋がりがある阿片の密売人だ」
「な、なんだと!」
「馬鹿!声が大きい!」
 一緒にいた仲間が、秀雄の口を急いで塞ぐと、引きずるようにして建物の陰に連れていく。
「放せ!」
 口を塞ぐ仲間の手を引き剥がし、荒い息を吐くと、秀雄は自分を落ち着かせた。
「あの男が阿片の密売人とは、どういうことだ。なぜ捕まえない」
「なんでも、軍の上層部に女を使って阿片の密売を黙認させてるって噂だ」
(そんな男が、百合子の家の庭師をしているのか?)
 秀雄は、黙認している上層部に嫌悪感を覚えながら、百合子の身に危険が迫っていることを感じた。
「すまん、俺は用事が出来た。酒はお前たちだけで飲んでくれ」
 そう言い残し、引き留めようとする仲間を無視して踵を返すと、一目散に野宮家へと急いだ。


 質素な夕食も終わり、食後の紅茶を飲んでいると、突然玄関のドアが叩かれる。ドアを破りそうな勢いの音は、百合子を脅えさせるのに十分だった。
「な、何?」
「私が見てまいります」
瑞人と百合子の給仕で傍にいた藤田が、急いで玄関へと足を向ける。
借金取りかと思った藤田は、緊張の面持ちで口を開く。
「どちらさまでしょうか?」
「俺だ、尾崎秀雄だ!急ぎの用で来た。お前たちに話がある」
 秀雄の焦った声にただならぬものを感じ、藤田は急いで鍵を開けた。
 少し開いたドアから身体を滑り込ませるように入り、秀雄は、すぐにドアを閉める。
「どうされましたか?お話とは……」
 呆気に取られている藤田に掴みかかる勢いで、秀雄は詰め寄った。
「真島は、今いるか?」
「は?真島……ですか?いえ、何か用事があるとかで出かけておりますが……」
 藤田は、百合子に話があるものだと思っていた為に、突然真島の事を訊かれて戸惑う。
「なら、あいつの出身地は知らないか?」
「いえ……。真島は、自分の事を何も話さなかったもので」
「……もしかしたら、真島は阿片の密売人かもしれん」
秀雄は軽く唇を噛み、声をひそめて藤田に伝えた。
「どういうことですか?」
「先程、繁華街で真島を見かけたんだが、一緒にいた軍の仲間が真島の顔を知っていた……。そいつが、阿片の密売人だと……」
「なっ!」
 驚きのあまり、藤田は目を見開き絶句する。
「今までの真島の行動に、おかしなところはなかったか?」
「時々、長期の休暇を取っておりましたが……。まさか……」
「ここにいては危ないかもしれん。とりあえず俺の所に来い。すまんが電話機を借りるぞ、藤田は二人に説明してくれ」
「か、かしこまりました」
 慌てた様子で食堂へと向かう藤田を見送ると、秀雄は電話機のある場所へと足を向けた。


「支度は終わったか?」
 玄関で今かとやきもきしていると、訳が分からないといった様子の百合子が階段を下りてきた。
「秀雄さん、藤田から話を聞いたんだけど、なぜ此処を出なくてはいけないのか、よく分からないわ」
「詳しい説明は後でする。とにかく早く此処を出るんだ」
 秀雄が百合子の手を取り、玄関のドアを開けて急かす様に引っ張る。その後ろを瑞人、藤田と続いた。

「どこにお出かけですか?」
 もうすぐで門を出るという時に、突然、後ろから声が掛けられる。振り返ると真島が立っていた。その姿は、真島であって真島でない。見たことが無いような表情に、百合子の背筋がゾクリとした。
「少し用事があってな、うちに来てもらうところだ」
「困りますね尾崎様……。勝手な事をされては」
 口の端を歪めながら、真島は袂から黒光りするものを出して百合子たちに向ける。咄嗟に秀雄と藤田が前に出て、二人を守る壁となった。
「やはり、お前は……」
 藤田が、悔しそうに呟く。自分が、出自を確かめなかった所為だと、己を責めた。
「阿片の売人であるお前が、なぜこの家に来た?」
 秀雄は時間稼ぎの質問を、真島にぶつける。
「尾崎様には関係のないことですが……まぁ、いいでしょう。俺は、この家に復讐しに来たんですよ」
「復讐?」
「まさか!債権を一手に握って脅していたのはお前か!」
 藤田は声を荒げながら、拳を握りしめた。
「藤田様も大変でしたでしょう?守るべき方達を守れなかったんですから」
 勝利に酔いしれるような真島の嘲りに、藤田は唇を噛み締める。
「それで?復讐とやらは済んだんじゃないのか?この家の子爵も子爵夫人も亡くなったんだ。それとも、この二人がお前に何かしたのか?」
「いえ。俺は、この家を根絶やしにしたいだけなんで、姫様と殿様にも亡くなっていただきたいんですよ」
 秀雄の問いに淡々と話す真島は、どこか自虐めいたものを感じさせた。
「お前は、根絶やしにしたいくらい、この家を怨んでいたのか?」
 その問いには答えず、蔑むような視線を向けると、口を開く。
「尾崎様、知っていますか?そこの二人は兄妹であるにも拘らず、肌を重ねていたことを」
「ああ、知っているさ。だが、そう仕向けたのは、お前だろう?」
 秀雄の言葉に真島は唇を噛んだ。
「お前が借財を一手に握って脅さなければ、こんなことにはならなかったはずだ」
「尾崎様には分からないんですよ、この家に纏わり付く呪われた血というものが」
真島は嘲るように鼻で笑う。
「呪われた血だと?どういうことだ」
 秀雄が真島に問いただそうとした時、屋敷の周りが騒がしくなってきた。やっと来たかと心の中で安堵した秀雄は、ほくそ笑む。
「憲兵のほうに俺の知り合いが居てな、周囲は包囲されているぞ、真島」
「やれやれ、用意周到ですね尾崎様。仕方ない、そろそろ俺は行かせていただきますよ。姫様……さようなら……」
 真島は、百合子を凝視した後、憲兵などさほど気にもしていない様子で、百合子達に背を向けると走り去る
「待って真島。なんの恨みがあってこんな事をしたの?真島!」
 百合子の言葉を受けながら真島は振り返ることもなく、木々に隠れるように姿を消した。


 真島と入れ替わるようになだれこんで来た憲兵達も、屋敷の中を一通り調べ終わると帰っていった。
 慌しい時間が過ぎ、藤田の淹れてくれた紅茶を応接室で飲みながら、全員で疲れた気分を癒していた。気づくと、時間は深夜を回っている。
 裏で操っていた真島も居なくなり、いつの間にか借用書も返ってきていた。
「これでお前達が身体を売らなくても済むな」
「本当にありがとう秀雄さん。秀雄さんが真島を見かけなかったら、どうなっていたか……」
 百合子は真島が言っていた言葉を思い出していた。
―――姫様は犯人を知りたくありませんか?
 あれは自分の事を言おうとしたのだろうか……。犯人が自らの罪を告白してなんの得があるのだろう。それとも自分の事を知ってほしかったのだろうか。
 真島の真意は分からなかったが、今は取り戻せた平穏を素直に喜ぼう。百合子は、そう思った。

「さ、百合子、この家から出るぞ」
 秀雄がカップを置き、突然口を開いた。出てきた言葉に百合子は首を傾げる。
「え?なぜ?」
「こんな家に百合子を置いておけないからな」
 秀雄の言葉に部屋の空気がピンと張り詰める。
「嫌よ!なぜ!?」
「お前達兄妹は一度でも身体を重ねたのだろう?一度してしまえば箍が外れて二度三度と繰り返すだろうからな」
 真島は『この家に纏わり付く呪われた血』と言っていた。それは近親相姦を意味しているのではないか?秀雄も子供の頃から感じていた。瑞人は百合子を女として愛しているんじゃないかと。このままこの家にいては百合子がどうなるか分からない。
 秀雄の言葉に百合子の全身から血の気が引いた。
此処を出て行く?藤田と離れる!?
「嫌!」
 百合子は急いで藤田に駆け寄ると、大きな身体の背にしがみ付いた。
「百合子は嫌だってさ、秀雄君」
「ふざけるな!百合子!行くぞ!」
嘲るような瑞人の声に秀雄が激高して長椅子から立ち上がった瞬間、強い眩暈が襲い、よろめいた拍子に卓子の上のカップを落としてしまう。
「な、なんだ、これ、は……」
 長椅子の背もたれを支えに、かろうじて立ってはいるが、少しでも気を緩めるとくずおれそうになる。
「くっ……」
 片膝をついた途端、気が緩み、瞼が重くなって目を開けていることが出来ない。床に倒れ、意識が朦朧とする中、瑞人の笑い声を聞いた気がした。

「秀雄さん!」
 倒れた秀雄に驚き、百合子が慌てて駆け寄る。呼吸はしているが意識はない。眠っているようだった。
「お兄様、何をしたの!?」
 百合子は咄嗟に、瑞人が何かをしたと思った。
「秀雄君は眠っているだけだよ。よっぽど疲れていたんだろうね」
「お兄様!」
 ふざけたような返答に、百合子は苛立ち、声を荒げる。
「……秀雄君が百合子を連れ出そうとするのは目に見えていたからね。紅茶に薬を入れて少し眠ってもらっただけだよ」
 仕方がないだろうと言わんばかりの瑞人の態度に、百合子は戸惑った。
「なぜそんなことを……」
「秀雄君に何を言っても納得する訳ないだろう?」
「そ、それは……」
「さぁ、百合子、お前が選ぶんだよ。これからどうするのか」
「どうする、って……?」
「僕達と一緒にいるのか、それとも秀雄君と一緒に、この家を出るのか」
 百合子は息を呑んだ。このまま秀雄が起きれば、今度こそ絶対に連れ出されてしまう。そう思った。
「わ、私……お兄様たちと一緒に居たいわ……。でも、どうすればいいの?秀雄さんが起きたら……」
 瑞人は百合子の傍に歩み寄ると、そっと耳元で囁いた。
「僕達の仲間にしてしまえばいいんだよ」と。
 それは悪魔の囁きにも似た、甘く穢れた誘惑だった。



 ぴちゃぴちゃと何かが舐めている音がする。体中を生暖かいものが這いずり回っている。その生暖かいものは腹を通り、徐々に脚の方へと下りていく。くすぐったさに身体を捩ろうとするが、鉛のように重い自分の身体はびくともしなかった。
「う……ん……」
 かろうじて声は出せるようだが、頭が朦朧としてうまく働かない。
 突然、排泄器官がヌメヌメとした生暖かいものに包まれた。驚きのあまり、意識が一気に覚醒する。
 目を開けると百合子の部屋だった。腕を動かそうとすると、後ろ手に縛られているのか微かな痛みが走り動かせない。頭を擡げると、秀雄の足元で百合子の頭が上下に動いている。
「な、何をしてる!」
 顔を上げた百合子の口元は唾液でぬらぬらと光り、淫靡な笑みを浮かべていた。真っ赤な襦袢は、前がはだけていて白い乳房が露になっている。
「秀雄さん、もう起きちゃったみたい」
 誰かに伝えるような百合子の言い方に、秀雄は違和感を覚えた。
 辺りを見回すと、ドアの傍に藤田が立っており、自分が寝ている寝台の横には椅子に座って愉しそうに見ている瑞人がいた。
「お前達、俺に何をした」
 一糸纏わぬ自分の姿を見られていることに羞恥し、顔を赤らめながら瑞人を睨みつける。
「君が百合子を連れて行くなんて言うから、少し眠ってもらったんだよ」
「なんだと!」
 悪びれもなく言う瑞人に、秀雄は怒りを露わにした。
「僕はね、秀雄君。君に最後の機会をあげようと思っているんだよ」
「どういうことだ?」
「君さ、百合子のことが好きだろう?」
「なっ!」
 明らかに動揺する秀雄を、瑞人は面白そうに眺めながら百合子に近づき、露わになっている白い乳房に手を這わせる。
「だからさ、このまま見逃してくれるなら、僕達の仲間に入れてあげるよ。百合子を抱きたいだろう?」
「ふざけるな!貴様ら全員逮捕してやる」
 顔を紅潮させ怒りに震えながら、秀雄は呪いをかけるかのように低い声音で言った。
「いいのかい?百合子も逮捕するなら、この身体に二度と触れないけど」
 そう言いながら秀雄を挑発するように、百合子の乳首を捻り上げる。
「んっ……」
 百合子の身体がぴくりと反応を示す。その痴態に秀雄の喉仏が大きく上下に動いた。必死に目を逸らそうとするが、気持に身体がついてこない。
「どうする?秀雄君。このまま僕達の事を放っておいてくれるだけで、百合子が抱けるんだよ」
 悪魔のような誘惑に秀雄は歯を食いしばり、瑞人を睨みつけた。秀雄の態度に瑞人は鼻白むと、面白くなさそうに百合子から離れ、椅子に座る。
「あーあ、秀雄君は本当に素直じゃないなぁ。ねぇ百合子、面倒臭いから秀雄君に分からせてあげなよ。本心は、どうしたいのかさ」
 百合子は小さく頷くと、クスクスと愉しそうに笑いながら秀雄を跨ぎ、熱い吐息を吐いて、屹立している男根をずぶずぶと自分の中に入れていく。
「うっ、あっ」
 今まで感じたことの無い快感が秀雄を貫いた。熱く柔らかい肉襞が秀雄のモノに絡みついて離さない。
「や、めろ、百合子……」
「秀雄さんが、悪いのよ。あんな目で私を見るから……」
「なに、を……言って、る……」
「秀雄さんは、いつも私を高いところから見下ろして……。呆れているんでしょう?蔑んでいるんでしょう?」
 百合子は手を付いて身体を支えながら、ゆっくりと腰を上下に動かす。
「そ、んな、ことは……ない……」
 絶え間なく送られてくる快感に、秀雄は歯を食いしばり、射精してしまいそうなのを必死で堪える。
「嘘つき。んっ、さっきだって……あっ、んっ、私を……此処から、んっ、連れ出すって……言ってた、じゃない。はぁ、んっ」
 まるで秀雄を責めるかのように、緩急をつけて腰を動かす。だんだんと百合子の情欲にも火が付いてきたのか、頬を上気させながら、腰の動きを速めた。
「やめろ……ゆり……こ……やめて、くれ……」
百合子を抱きしめることも出来ず、ただ乱暴に与えられる快楽に抗おうと、秀雄は必死に耐えた。
 切羽詰った秀雄の言葉に、限界が近いのだと百合子が理解すると、更に秀雄を追い込んでいく。
――愛していた。いつの頃からか幼馴染の百合子を。百合子の為なら、どんなことでもしてやりたいとさえ思っていた。百合子を想いながら一人で果て、罪悪感にさいなまれた事もある。いつかは百合子と一つになりたいと想った。だが、こんな形では望んでいない。本来ならお互いを慈しみあいながら、するものではないのか?俺の知っている百合子は、こんな事をしない。これは百合子じゃない。
 必死に自分を保とうと、心の中で言い訳にも似た言葉を紡いだ。
 しかし、そんな言葉も空しく、百合子の声で、百合子の身体で、秀雄の自尊心は粉々に壊される。快楽と罪悪感が楔のように打ち込まれ、秀雄の身体に刻み付けていった。
「あ、んっ、秀雄さん……。ああっ」
 百合子は腰の動きを速めた。ぐちゅくちゅと淫猥な音が部屋に響く。
「ん、くっ、あああぁぁっ」
 秀雄は耐え切れず百合子の中に子種を吐き出す。百合子は、自分の中に熱いものが広がるのを感じ、涙を零した。
「秀雄君だけいい思いをするのは、ずるいなぁ」
 今まで傍観者だった瑞人が、百合子の襦袢を捲り、臀部を撫でながら口を開く。
 百合子は瑞人が何を求めているのかを感じ取り、秀雄を中に収めたまま尻を高く瑞人に向けた。
「お前たちは……狂ってる」
 吐き捨てるように言う秀雄に、瑞人は見た者を凍りつかせるような、薄ら笑いを浮かべている。
「そんなことを言ってる秀雄君だって、僕達と同じなんだよ。百合子の身体に溺れ始めているんだろう?僕達は仲間なんだよ」
「お前達と同じだと?ふざけるな!俺はお前達と違う!」
「ああ煩いなぁ……。百合子、秀雄君の口を塞いじゃってよ」
 怒りに声を荒げる秀雄の態度をうざったそうに言いながら、瑞人は自分の男根を、百合子の股から染み出る愛液に擦りつけた。
「はい、お兄様」
 百合子は小さく頷くと、秀雄の頬を両手で挟み、無理矢理口づけ、舌を絡ませる。
「ん、む……」
 瑞人は、百合子の尻肉を左右に広げ、蕾のように閉じている肛穴に自身をあてがうと、少しずつ押し広げながら挿入させていった。
「んんっ!あ、はっ、んっ!」
 二つの穴を同時に埋められ、薄い腸壁に隔たれた肉棒が恐ろしいほどの快感を生み出し、百合子は堪えきれずに秀雄から口を離す。
「ひっ、あ、あ、ぐっ、あぁっ!」
 瑞人が、ゆっくりと腰を動かすと、その振動で百合子の身体も動く。秀雄のモノと瑞人のモノで抉られ、ぐちゃくちゅと汚らしい音を響かせる。
「あ、あっ、んっ、ふじ、た……きて……」
 百合子は、淫らに腰を振りながら、藤田へと情欲に塗れた顔を向ける。
「お前の……モノを、あ、んっ、口に……ちょうだい……あっ、ん」
 頬を上気させ、荒い息を吐いていた藤田は、生唾を呑み込む。
「姫様……」
 藤田は、百合子の顔の傍へ、おもむろに近づくと、ズボンを下ろし、下帯も取り去って自身を取り出す。
 百合子は嬉しそうに口を開くと、涎を垂らしている鈴口を頬張った。亀頭をざらりと舐め上げ、尿道口に舌先を入れる。片手で陰茎を握ると上下に擦った。掌に熱と脈が伝わり、百合子は酔いしれる。
 ぐちゅぐじゅちゅぷと、あられもない水音を響かせて四人は昇りつめていく。
 瑞人の動きが性急なものに変わり、それに合わせて秀雄も百合子を突き上げる。
「ああぁっ、あっ、あ、あ、んっ、あぁっ」
 藤田を握る百合子の手も、徐々に動きを速めていく。
 腸壁、膣壁を捲りあげられ、内臓が引き出されそうな快感に百合子は、よがり狂う。
「あぁっ!んっ、はぁっ、んっ」
「あぁ、イクよ、百合子。中で、くっ、あ、あぁぁぁぁっ」
「ひ、ひめ、さま……あぁっ」
「くっ、百合子……あ、あ、ああぁぁぁっ!」
 全員が同時に果てる。白濁した液が、百合子の肛穴、膣、口と全ての穴という穴を穢していく。
 艶やかな長い髪を振り乱し、肌を桜色に染めながら、恍惚の表情で精液を受け止める百合子の姿を、秀雄は美しいと思った。


「尾崎様は、お帰りになられました」
 秀雄を見送った藤田が百合子の部屋に戻ってきた。瑞人は既に部屋に戻っていて、寝台には、半裸の状態で百合子が寝そべっている。
 あの情交の後、縄を解かれた秀雄は、藤田が持ってきた服を引っ手繰る様に受け取ると、無言で着替え屋敷を出て行った。裸のまま、夢うつつな百合子たちを睨みつけて……。
「そう。秀雄さんは何か言ってた?」
「いえ、何も。ただ、門からお出になるとき、一度お邸の方を振り返られました」
――秀雄が部屋を出る時、瑞人が言っていた言葉
「また、おいで」
 まるで遊びに来た子供にでも言うように、告げた一言……

「尾崎様は、またお見えになるでしょうか……」
 昏く澱んだ視線を百合子に向けながら、藤田は呟くように口を開いた。
「分からないわ。秀雄さんのことだもの」
「姫様は……また尾崎様がいらっしゃれば……その……」
「ええ、するわ。秀雄さんが来れば、の話だけど。……なぁに?やきもち?」
 百合子は小さく笑いながら、藤田の反応を窺う。
「あ、いえ……」
 顔を赤らめ、視線を逸らす藤田の反応に、百合子は思い通りにならない苛立ちを覚えると同時に、愛おしいとも思った。
「藤田……私の口を吸って……」
 両手を藤田の方に向けながら、百合子がねだる。
「姫様……」
 百合子に誘われるまま、藤田は、ふらふらと寝台に近づき跪いて、桜色の唇にそっと重ね合わせた。
 お互いの舌を絡ませ、唾液の糸を引いては絡ませ、繰り返される口づけ。指の間に感じる藤田の柔らかな髪。頬にかかる熱い吐息。唇を掠るざらりとした髭。藤田の全てを感じたいと、百合子の下腹部が疼く。
――私の為に嘘を吐いた藤田。求めたくても本心を言わない藤田。女々しい藤田。全て憎らしくて、愛おしい。お前の気持ちなど関係ない。お前だけは何があっても離さない


 熟れすぎた腐りかけの果実のような甘い香りが充満するこの屋敷で、今日もまた淫猥な宴が始まる。
 堕ちたら這い上がれない底なし沼のような快楽は、百合子の身体を蝕んでいく。
 藤田と瑞人、そしてきっと秀雄も来るだろう。四人だけの秘密の宴。
 百合子は蜜を垂らし、甘い匂いで男たちを惑わせ離さない。まるでウツボカズラのように、ゆっくりと身も心も溶かしていく。
 そして、今宵も喘ぎ声を響かせる。歓喜の涙と共に……。

――藤田、お前と一緒に居られるなら、私はどこまでも堕ちていくわ……



あとがき
はい。快楽堕ちでした。
真島は、安心の迂闊王でしたねw やっぱり誰かに見られてしまうというw
この話は、壱と違って藤田と百合子の気持ちが通じ合っていません。
もう少しうまくそこら辺を書きたかったのですが、これが私の限界のようです(;´Д`)
壱との対比を書きたかったんですけど、上手く書けなかった…。ゴメンナサイ。
そして、コレは『ふじゆり』なのか!?という疑問が湧いてしまいました。
書いてみるとあまりにも秀雄が出張ってきてしまって、藤田が霞んじゃったよ…。
今度は別の話でハッピーEDにしたいですね。


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